Kinda Dukish (かいんだ・でゅ~きっしゅ)

「デューク・エリントンの世界」別館。エリントンに関することしか書いてません。

マックス・ローチの裏の顔。Max Roach、『Money Jungle』を語る。

マックス・ローチ

善良そうな顔に騙されてはいけない。

中学生の頃に公園のダンボールに住んでいたような顔に騙されてもいけない。

 

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小さい頃、管理人の家には1枚だけ父が買ったローチのCDがあった。 

限りなきドラム

限りなきドラム

 

 

このジャケットのせいで、管理人はローチのことを長いあいだ真面目な職人ドラマーだと思っていた。

だが、これは大きな間違い。

ローチは人種差別反対の運動家でもあるわけで、「闘士」というのががローチの本性だ。『Money Jungle』についてあれこれ調べていて、ようやくそれに気づくことができた。

 

MONEY JUNGLE + 3

MONEY JUNGLE + 3

 

 

まずはこれ。

年下の人間に対する態度。

 

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ローチ

「君がトニー・ウィリアムス君か。

 若手で活きのイイのがいるってのは聞いてるよ。

 トニー、マイルスはドラムソロが嫌いだから気を付けろよ」

 

トニー

「おぼえておくよ(…あんたのドラムソロは、だろ)」

 

すごい上からの発言だ。トニーの生意気ぶりもすごい。

 

そして、チンピラぶりも板についている。

 

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ローチ

「リーダーはオレとブラウニーなんだから、お前は目立ちすぎんなって言ってんだよ。

 オレがグラサンしてるときはお前はグラサン禁止な。」

 

ロリンズ 「・・・」 

 

ローチ 

 「あと誤解すんなよ、お前は顔が長いんじゃなくて頭がデカいんだ。

 小顔なのはオレ、お前はモアイだ」

 

ロリンズ 「・・・」 

 

こんなこと言われたら、そりゃロリンズも一緒にやりたいとは思わないよなあ。

ブラウン=ローチ・クインテットのテナー、最初はロリンズじゃなくてハロルド・ランドだったのはこれが理由かも。

 

以上2つは年下への態度。

年長者に接するときは態度が豹変する。

その根回し能力は驚嘆に値する。

 

【『Money Jungle』録音時】

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エリントン

 「やっぱり Mood Indigo はやりたいよな~」

 

ローチ

 「ミスター・エリントン。申し上げにくいのですが、「ムード・インディゴ」は最近の若者にはあまりウケがよくないみたいですよ。今の流行はフリーです」

 

ミンガス 「・・・」

 

 

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エリントン

「え、マジ?」

 

ローチ

「マジなんです。ところで、ベイシーのナンバーで、「Cute」という曲をご存知ですか? ソニー・ペインのブラシをフィーチャーしたナンバーで、これが58年の曲なのに未だにすごくウケてるみたいなんですよ。」

 

ミンガス 「・・・」

 

 

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ローチ

 「「Cute」みたいなドラム・フィーチャー曲やりましょうよ。わたしはああいうのも得意ですよ。あと、新曲もぜひ。今年はアフリカ諸国の独立が相次いだので、何かアフリカにちなんだ名前の曲があると批評家ウケもいいかと」

 

エリントン

 「それはいいけど…「ムード・インディゴ」が最近不人気…」

 

ローチ

 「まあまあ。ミンガスもそれでいいよな」

 

ミンガス 「・・・」

 

これが「A LITTLE MAX」と「Freurette Africaine」が生まれた背景だ。

なんていやらしい奴なんだ、ローチって奴は。

 

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間違えた。。。

 

考えてみれば、ローチはこんな思想色の強い作品も発表してるわけで、勝手な思い込みをしていたこちらが悪い。

 

We Insist Max Roach's Freedom Now Suite

We Insist Max Roach's Freedom Now Suite

 

 

ローチの本性がわかってみると、以下の『Money Jungle』へのコメントもどこか嘘っぽく聞こえてしまう。

 

マックス・ローチ(ds, Max Roach, 1924-2007)

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 このレコーディングは、チャールス・ミンガスとわたしにとって夢にまで見たものだった。どちらもデュークの音楽に影響を受けていたし、その素晴らしさに常々感動していたからね。このときは、アルバム二枚分くらいの録音をした。楽しかった。この三人ならいくらでも演奏ができる感じだった。デュークとプレイしていると、まったく煮詰まることがない。次々とアイディアが湧いてくる。〈キャラヴァン〉や〈ソリチュード〉など、彼のオーケストラでお馴染みの曲をピアノ・トリオで演奏するのも新鮮な気分だった。それはデュークも同様だったようだ。

 終わったあとでチャールスと近くのバーで乾杯しながら、レコーディングについてしみじみと語りあった。デュークがトリオのメンバーにわたしたちを選んでくれたことも誇らしかった。あのときのウィスキーは本当においしかった。美酒っていうのは、こういうときに飲むお酒のことだ。(86年)

 …うーん、表面的だなあ。あれだけの演奏をしたんだから、もっとコアなコメントが欲しかった。。。

 

コメントの出典はいつものこれ。

ジャズマンが愛する不朽のJAZZ名盤100

ジャズマンが愛する不朽のJAZZ名盤100

 

 

この作品については、もう一人、マーカス・ロバーツのコメントも収められている。 

 

・マーカス・ロバーツ(p, Marcus Roberts, 1963-)

 

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 デューク・エリントンのピアノ、ベースがチャールス・ミンガスでドラムスがマックス・ローチ。アルバムは『マネー・ジャングル』、録音は62年。曲名は忘れたけれど、彼のオリジナル・ブルースだ(〈スウィッチ・ブレイド〉)。エリントンはピアニストとしても偉大だった。それはこのブルースを聴けばよくわかる。彼が大切にしているのは、テクニックよりエモーションの表現だ。サッド・フィーリングもあれば、ハッピーな表現もある。ブルースは人生そのものだから、そうしたあらゆる表現がこの短い演奏の中に集約されている。まさにこのブルースは人生そのものだ。

 ブルースはフォームじゃなくてエモーションを吐露することなんだ。フォームやストラクチャーを追求するだけでは意味がない。そんなものはブルースを演奏する上でほんのわずかな要素にすぎない。大切なことは、ブルースというフィロソフィーをいかに自分の表現を用いて伝えるかじゃないかな? 形式はどうでもいい。ブルースの本質はエモーションの表現にある。それがブルースのフィロソフィーだ。エリントンのこの演奏は、まさしくそうしたものを表している。(97年)

 

  

以下は小川隆夫氏のコメント。

 オーケストラのリーダーとして、また膨大なオリジナルを残した作曲家として、デューク・エリントンの名前は永遠に不滅である。それらに較べるとあまり語られないが、ピアニストとしても彼は独特のスタイルの持ち主だった。エリントンのピアノ・プレイに焦点を当てた作品は多くない。しかし、いかに優れたピアニストであったかはこの作品が証明している。

 

 マーカス・ロバーツがブルースについて話したのは、インタヴューの直後に『ブルースの彼方へ』(ソニー)と題したブルース・アルバムを発表することになっていたからだ。それもあって、この作品に収録されたブルースをいくつか聴いてもらった。中でも〈スウィッチ・ブレイド〉が気に入ったようだ。ところで『マネー・ジャングル』には、マックス・ローチが語っているように、もう一枚分に相当する未発表演奏が残されていた。いまではそれらも含めてコンプリート・ヴァージョンがCD化されている。ローチがミンガスと美酒に酔った気持ちもよくわかる。どちらかといえば、ローチよりミンガスのほうがエリントンには私淑していた。日ごろはこわもてのミンガスも、このときばかりは相好を崩しっぱなしだったという。

 

…え~と、言わずもがなだが、このエントリ、小川隆夫氏の著作からの引用以外はほとんど創作、管理人の妄想。ローチとロリンズの険悪なムード、というのも妄想だ。

 

この2人、ブラウニーも交えて、

アット・ベイズン・ストリート+8

アット・ベイズン・ストリート+8

 

(56年, 1-2月)

 

と録音し(56年, 3月)、クリフォード・ブラウンが交通事故で亡くなった後も、

マックス・ローチ・プラス・フォー (紙ジャケット仕様)

マックス・ローチ・プラス・フォー (紙ジャケット仕様)

 

こんな作品作ってます(56年, 10月)。

最後の『Max Roach +4』のジャケットでみんな黒いスーツを着てるのはブラウニーへの追悼でしょう。事故は6月、録音は10月。

さらにこんな作品では「Valse Hot」も取り上げている。 

ヴァルス・ホット?ジャズ・イン3/4タイム+2 (紙ジャケット仕様)

ヴァルス・ホット?ジャズ・イン3/4タイム+2 (紙ジャケット仕様)

 

 (56-57年, 10月)

 

以上、一応のフォロー。

マックス・ローチは、ちょっと自信満々そうなところはあるが真面目でいい人だ、と思う。……たぶん。

 

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