前回、「Don't Get Around Much Anymore」について、『ジャズ詩大全(1)』を参考にして歌詞の面から書きました。
今回はその補足。
「Don't Get Around Much Anymore」(Never No Lament)は、作曲はもちろんエリントンですが、これに歌詞をつけたのがボブ・ラッセル(Bob Russell)。
で、『ジャズ詩大全(1)』で知りましたが、ボブ・ラッセルは詞を書くだけでなく、曲も書きます。その一つの例がビリー・ホリデイで有名な「Crazy she calls me」。曲をボブ・ラッセルが書き、詞はカール・スィグマン(Carl Sigman)。
……と、簡単に書きましたが、実はこれはなかなか複雑な問題をはらんでいます。というのも、古いデータになると、この作曲者と作詞者が入れ替わっているものも複数あるからです。作者の村尾氏によると、結局、どっちがどっちかわからなかった、とのこと。
また、現在はこの曲は「Crazy she calls me」よりも「Crazy he calls me」とする方が多数なようで。もっとも、これはビリー・ホリデイが「she」を「he」と置き換え始めてから定着したみたいなのです。ややこしいなあ。まあ、歌い手の性別(というか心境)で使い分ければいいんじゃないでしょうか。
で、このカール・スィグマンはエリントンの曲にも詩をつけてます。
それが「All too soon」。
管理人が特に愛するエリントン・ナンバーです。
特に『Piano Reflections』のトリオの演奏が大好き。
いつ聴いても、この進行とハーモニーにうっとりとしちゃうんですよ。
さて、このカール・スィグマンは、タッド・ダメロンの「If you could see me」とかにも歌詞をつけてます。
「Crazy she calls me」は、ビリー・ホリデイ以外だったらナット・キング・コールやリンダ・ロンシュタットとかカバーしてます。
以上、『ジャズ詩大全(1)』における、エリントン・ナンバー周辺の話でした。