Kinda Dukish (かいんだ・でゅ~きっしゅ)

「デューク・エリントンの世界」別館。エリントンに関することしか書いてません。

Sopphisticated Lady のカバー。ジャコからクリスチャン・マクブライドへ。その源流はミンガス?

「ソフィスティケイテッド・レディ」といえば、非常に音程が取りづらく、歌い手泣かせの曲で知られている(その割にこの曲を歌いたがるボーカリストは多い)。

しかし、わたしの印象に残っているのはジャコのカバー。

TWINS I&II~ライヴ・イン・ジャパン’82

TWINS I&II~ライヴ・イン・ジャパン’82

 

 

言わずと知れたWord of Mouthビッグバンドの日本公演のライブ盤。

トゥーツ・シールマンスの大フィーチャー曲で、シールマンスのソロ ~ ジャコとのデュオ ~ バンドの派手な伴奏という構成。
もはや間奏といっていいほどのリラックスした演奏で、
イケイケドンドンな緊張感が持続するこのライブでは、ほっと息をつくことができるとても貴重な時間を提供している。

ラストのトゥッティ前、ジャコの「デロデロ~」が耳に残る。

ジャコの演奏は狂気を感じるほど激しく、才気に満ちているが、その合間に時折見られる繊細な叙情性がたまらなく好きだ。

(『Word of Mouth』は狂気と涅槃を往復し続ける作品だ。最後の「John And Mary」の美しいこと…! しかし、最後の最後で現れるのはやはり狂気)  

ワード・オブ・マウス

ワード・オブ・マウス

 

 シールマンスとのデュオによるSophisticated Ladyは、このライブの実にいいアクセントになっているのである。

そして、この選曲は、ウェザー・リポートでの「Rockin'in Rhythm」が響いているのではないか。そんな妄想も膨らむ。

 

ベーシストによる「ソフィスティケイテッド・レディ」カバーといえば、こんなのもあった。 

Jazz for Japan

Jazz for Japan

 

東日本大震災被災者支援CD。

収益の一部が日本赤十字社を通じて被災地の復興支援に役立てられた企画盤で、
アメリカ西海岸を中心に活躍するコンテンポラリー・ジャズ界のミュージシャンによるスタンダード曲の演奏。
正直、セッションの域を出るものではないが、演奏は悪くない。

この中で、Christian McBride(b)とBilly Childs (p)がデュオでSophisticated Ladyをカバーしている。

ジャコとシールマンストのデュオと並べてみると、クリスチャン・マクブライドのこの選曲はジャコを意識したもののようにも思えてくる。

これもまた勝手な妄想だ。

 

だが、ここで思い出すべきだ、この曲のベースソロを始めたのはミンガスであることに。

 

Cornell 1964

Cornell 1964

 

 

Great Concert of Charles Mingus

Great Concert of Charles Mingus

 

それぞれ、ピアノとのデュオだが、ピアノはあくまで伴奏。

ほとんどミンガスのベースソロ。

そういえば、ベーシストがエリントン・ナンバーを取り上げるときって、たいていsophisticated Lady と Mood Indigo を取り上げるけど、それはミンガスを意識してるのかもしれない。

 そう考えると、

担当楽器を変えて、デュオという形式をより発展させたのがジャコ、 

この発展を受けてデュオという形式を維持したまま、ピアノとの会話に戻ったのがマクブライド、といえるのかもしれない。

どちらもミンガスを源とする流れの中にある。

これが3つ目の妄想だ。

 

 以上、エリントン曲カバーに関する3つの妄想。

それにしてもこの曲、英語でも日本語でも書きにくい。

予測変換万歳。

 

※ 以下、12/30 追記。

以上の内容をアップしてtwitterに投稿したところ、@tahsaan_h さんから、源流というのならミンガスでなくブラントンでは、とのご指摘をいただいた。 まさしくその通り! ミンガスもブラントンの演奏を聴いてカバーしようと思ったはず、なのです。

「1940年のデュークとのデュオ録音で全編主役を張り、アルコとピチカートで創造的なソロを繰り広げています。」と、@tahsaan_h さんにその際挙げていただいた作品がこれ。

 

Sophisticated Lady (No. 2) [feat. Jimmy Blanton]

Sophisticated Lady (No. 2) [feat. Jimmy Blanton]

 

 

オリジナルはこれ。

f:id:Auggie:20161230052548j:plain Duke Ellington & Jimmy Blanton – Duo, '55 (RCA Victor)

 

録音自体はブラントン存命時だろうから39-40年だけど、発表は55年。

その当時のミュージシャンの衝撃は大きかったことだろう。21世紀のわたしたちが「ジャコの未発表音源発見!」みたいな感じで、ブラントンの「新譜」に狂喜したに違いない。

選曲、形式もいい。両面全4曲のEP盤だ。

A1.  Pitter Panther Patter
A2.  Mr. J. B. Blues

B1.  Sophisticated Lady
B2.  Body And Soul

 J.B.とはもちろん Jimmy Blanton のこと。James Brownでもないし、Jungle Brothersでもない。

で、この作品はこの4曲形式では再発されてない。しかし、なんとMP3形式で売られているみたいなので、バラバラに集めることは可能。

 

Pitter Panther Patter (feat. Jimmy Blanton)

Pitter Panther Patter (feat. Jimmy Blanton)

 

 

Mr. J.B. Blues (feat. Jimmy Blanton)

Mr. J.B. Blues (feat. Jimmy Blanton)

 

 

Sophisticated Lady (No. 2) [feat. Jimmy Blanton]

Sophisticated Lady (No. 2) [feat. Jimmy Blanton]

 

 

Body and Soul (feat. Jimmy Blanton)

Body and Soul (feat. Jimmy Blanton)

 

こういう形で昔のEP盤を自分で再編集する、というのは実に現代的で面白い。ジュークボックスにコインを入れて曲を聴く感覚を追体験しているかのようだ。

 

しかし、管理人としては、どうせ購入するならこちらをオススメしたい。

Solos Duets & Trios

Solos Duets & Trios

 

少人数の演奏形態によるエリントンのピアノにフォーカスしたコンピレーション盤。

ブラントンとのデュオ4曲の別テイク5曲を収録し、さらにストレイホーンとのデュオ2曲、エリントンのソロ、トリオを詰め込んで全21曲!

こういうコンピレーションものは普通はオススメしないけど、これは別。オーケストラ形式でなく、少人数演奏なのでエリントンのピアノをよく聴くことができるし、ブラントンとのデュオがこれでしか聴けない、という希少性を考えると、それだけでも購入の価値がある。

ここに収録されているブラントンとのデュオ9曲は本当に素晴らしい。Sophisticated Lady のカバーだけでなく、モダンジャズベースの源流がここにある、と言ってしまいたいくらいです。

そういえば、その昔、同朋舎が「読んで聴くCDマガジン」のジャズシリーズというのを出していて、その「デューク・エリントン」の号のCDに、こそっと「Pitter Panther Patter」が収録されていた。管理人はこれで初めてこの曲を聴いたのだが、この選曲者のセンスには脱帽するしかない。

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以上、期せずしてジミー・ブラントンにまで届いてしまった記事でした。

 

リンク元「デューク・エリントンの世界」「06 トリビュート関係 - カバー」

リンク元ジミー・ブラントン - デューク・エリントンの世界