野口久光氏のレビューでエリントンを辿るシリーズ、今回はホッジスの『サイド・バイ・サイド』。録音や発表の経緯を探ると、この作品、一般的にはホッジス/エリントン作品として挙げられていて、名門バンドのリードアルトがリーダーの胸を借りて1枚作った作品、みたいな感じで聴かれてるかと思います。
しかし、管理人にはこの1枚は「エリントン/ストレイホーン問題」が濃い影を落としていると思うのです……とりあえず、野口氏の紹介文を見てみましょう。

- アーティスト: デューク・エリントン&ジョニー・ホッジス,デューク・エリントン,ジョニー・ホッジス
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2010/01/27
- メディア: CD
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『サイド・バイ・サイド』 デューク・エリントンとジョニー・ホッジス (Verve)
広告やジャヶツトにはエリントン楽団となっているがエリントン(p)と長年同楽団のスター奏者として名声をもつジョニー・ホッジス(as)が、中心となってレコーディングのために編成した六、七重奏団の演奏集で、ここに集められたサイドメンは旧エリントン・メンバーが主に選ばれている。エリントンとしては彼の楽団を離れ、ホッジスらを誘ってピアニストとして気怪なスウィング・コンボのセッションを行なおうというわけで、きく方もオーケストラのカラーを期待しないことである。曲目(九曲)は大体エリントン楽団のレパートリーから選んでいるし、ふたりのほかに、ベン・ウェブスター、ロイ・エルドリッジ、ハリー・エディソン(tp)、ローレンス・ブラウン(tb)、クインシーのバンドで注目されているレス・スパン(g, fl)、ビリー・ストレイホーン(p)、ジョー・ジョーンズ(ds)といった主にスウィング派のベテランがふた組に分かれてコンボをつくっている。このLPのききどころはホッジスのアルトだが、楽団演奏の時にはあまりソロを弾かないエリントンのピアノや、ベン、ロイらもモダン奏者の中に讃美者が少なくないという実力のほどをみせてくれる。スタイルのせいもあって第二次大戦中のジャズの匂いがするが、吹込みは最近のもの、ステレオなのも結構である。いかにもグランツ好みの企画であり、モダン一辺倒のファンには不向きであろう。(『レコード藝術』61年11月号)
食い足りないなあ。
冒頭にも書いたように、録音や発表の経緯を探ると『Side by Side』は「エリントン/ストレイホーン問題」が潜んでいる作品であり、それは『Back to Back』と並べて考えることで明らかになります。
これについては以前このブログでも書いた。
・・・あまりにも正直なルー・ドナルドソンの言葉。誰もが一度は同じ事を考えたに違いない。・・・『Side by Side』は、元々エリントン抜きのホッジス作品を吹き込もうと考えて行われたセッション(58年録音)がベースになっています。もちろん、ピアノはホッジスと仲の良かったストレイホーン。
ところが、意に反してそれにエリントンが加わった59年の録音が付け加えられて「エリントン&ホッジス」名義で発表された。これは、エリントンの横槍によるものか、それともむしろ自分の名前を入れて発表しやすくするためのエリントンの懐柔策か。いずれにせよ、割を食ったのはストレイホーン。58年のセッションのピアノはすべてストレイホーンが弾いているのだが、すっかり影が薄くなってしまいました。この記事ではそんなことを書きました。
ということで、エリントン/ストレイホーン問題を象徴的するイラストを一枚。