Kinda Dukish (かいんだ・でゅ~きっしゅ)

「デューク・エリントンの世界」別館。エリントンに関することしか書いてません。

エリントンとザヴィヌル(その6)

tas1014さんのコメントまとめ、最終回です。

まずは、tas1014さんのコメントへのわたしの返事を。

 

いつも丁寧なコメント、ありがとうございます。
 …というかtas1014さん、もはやこれはコメント欄に留めておくのは勿体ない内容ですよ! エリントンの『My People』は、近々邦盤が再発されるみたいですし、多くの人にとって有益な情報になると思います。よろしければ、このザヴィヌルを巡るtas1014さんの投稿、エリントン『My People』の新たなエントリとして、引用という形(出典元記載)でご紹介させていただいてもよろしいでしょうか? 
 あと、『Duke's Diary』は私の手元にあります。この本は「日めくりエリントン」(わたしのTwitterアカウントです)のネタのひとつで、tas1014さんも仰るようにエリントン研究に非常に有益な本なのですが、この『My People』へのエリントン関与問題についてはあまり有益ではありませんでした。『My People』の開催については自伝の引用とライナーノーツ程度の情報の記載程度で、その他の日程については、8/22-27はデトロイトのState Fairgroundsでミシガンのステート・フェアに参加、8/28-9/2はニューヨークのエンパイア・コートでState Expositionに参加、という記載程度。一方で、同書には27日の『My People』録音にはエリントンが監督として参加、とあり、27日のエリントン本人の具体的な行動はわかりません。『Duke's Diary』は当時のパンフレットや雑誌記事などを収集し、エリントンの軌跡をそのまま再構成したもので、しばしばこのような細部の整合性があいまいな部分があります(そこがこの本の長所でもあるのですが)。

 

Duke's Diary Part 2: The Life of Duke Ellington 1950-1974 [並行輸入品]

Duke's Diary Part 2: The Life of Duke Ellington 1950-1974 [並行輸入品]

 

 

こちらこそ毎度稚拙なコメントを掲載してくださり、恐縮しております。コメントご引用の件ですが、光栄至極に存じます!表記が不統一だったり言い回しが冗漫だったりして噴飯物の駄文ではありますが、管理人さんに引用していただけるとは望外の喜びです。
 「Duke's Diary」もご親切に調べていただき、有難うございました。なるほど、収集した当時の資料をもとにエリントンの行動を時系列に再構成、再配列したものであったということで、どうやら諸データの検証や裏付けは行っていなさそうですね。それでも情報が豊富なのはこの本の魅力です。8/28-9/2にニューヨークのエンパイア・コートでのショーに出演ですか。まあ、公演スケジュールは相当前から決まっていたのでしょうね。
 先のコメントの後で知ったのですが、「The Duke Ellington Chronicle, or The Duke – Where and When: Duke Ellington's Working Life and Travels」というサイトでもエリントンの足跡(公演や録音の場所等の情報に限られますが)を追うことができるようです。(前半:http://ellingtonweb.ca/Hostedpages/TDWAW/removed20131130-nextTDWAWPartOne.html 後半:http://ellingtonweb.ca/Hostedpages/TDWAW/removed20131130-nextTDWAWPartTwo.html)(サイトの説明文に、典拠や他の参考文献について記載あり。)これによると、8/25は一時的にデトロイトからシカゴに行って何と「My People」のショーに参加(役割は不明)していたようです。いやはや。
 「My People」再発の情報も有難うございました。この作品に音楽愛好者の注目が集まるきっかけになるといいですね!それでは。

 

Duke's Diary』はエリントン研究には欠かせない文献、情報源で、とにかくエリントンの足跡を辿ろうとする百科全書的な熱意に溢れているのですが、その反面、誤りや矛盾点も検証せずに収録し、正確さに欠けているところがあるのも事実です。

一家に一冊(前半・後半で計2冊)あるとうれしいこの『Duke's Diary』、その図鑑的な装丁からインテリアとしても有用ですが、今では市場でも高価な手がついており、気軽に入手できません。そこで、tas1014さんも引いておられる、ネット上の情報を利用するのもいいでしょう。

 

 

リンク先、飛んでみましたか?

すごいでしょう。

はてなブログ 開発者もビックリなテキストサイト上等、なテキストサイト

こんなに重いページ、いまどき逆に貴重です。

 

なんか表示が昔と変わっていて、

 以前は罫線で仕切られていて、もう少し色分けされていて見やすかった気がしますが、

今は本当に情報だけが挙げられている感じですね。これで十分といえば十分なのですが。

 

 ああ、そうそう、この前半のハードカバー、中古市場でも長らく価格高騰の気配があったのですが、ペーパーバッグが出たみたいですね。前半はペーパーバッグで買っちゃう、というのも手かもしれません。

 

Duke's Diary

Duke's Diary

 

 

さて、上のtas1014さんへのわたしの返信と、それに対する返信です。

 

tas1014さん エントリでのコメント紹介の許可、ありがとうございます! では、Zawinul~『My People』の線でまとめますので、近日中にアップしますね、ありがとうございます。
そうなんです、「Where and When」と『Duke's Diary』は文字情報では同じ内容なので、内容だけなら「Where and When」で十分なのですよね、世界各地のマニア達からの補足情報も随時追加されてますし。わたしは購入してから気づきました…。

 

ご教示まことに有難うございます。さて、先の私のコメントですが、「The Duke – Where and When」のリンク先に誤って既に2013年11月24日に更新を凍結している旧版のほうのURLを記載してしまいました。カレント版のURLはhttp://tdwaw.ca/(他に英国エリントン協会のミラーサイトもあり)です。現時点でカレント版の最終更新日は2017年8月27日となっていますが、1963年8月25日のエリントンのシカゴ行き(2011年に情報追加)については、カレント版も同じでした。失礼しました。
 「The Duke – Where and When」はカナダのDavid Palmquist氏が作成し維持管理していますが、基礎となっているのはフランスのKlaus Götting氏が自分用に作った同名の「The Duke – Where and When」で、現在は全世界のエリントンファンからの連絡によりアップデートされているようです。「Duke's Diary / Ken Vail」のほうは、主に「Duke Ellington Day By Day and Film By Film / Klaus Stratemann」(JazzMedia, 1992)と故Joe Igo氏等の「Duke Ellington Itinerary (DEI) 」を基本としたようなので両者の由来に違いはありますが、前者(「The Duke – Where and When」)もStratemannの本によりチェックを行っているようなので、テキスト的には余り大きな異同はないのかもしれません。

 

みなさん、文献学的な裏付け、というのはこういう風に進めなければいけませんよ。このように一歩一歩進めることで発言、というか自分の考えに厚みが増し、検証に耐えうるようになっていきます。

もっとも、エリントンに関しては学会があるわけでなく、好事家による寄せ集め状態なのですが、その玉石混交な情報群が吟味され、ブラッシュアップされている状態といえるのではないでしょうか(またはこのまま消えゆくか)。

 

さて、では最後のわたしの返信です。

tas1014さん 返信遅くなって失礼いたしました。少し日常がバタバタしておりまして、ブログの管理が滞っておりました。 
いつも丁寧なご指摘、補足ありがとうございます! エリントンのクロニクル、そういうことなんですね、経緯のご説明ありがとうございます。
いま、ザヴィヌルとエリントンの関係をもう少し考えてみようと、ブライアン・グラサー『ザヴィヌル ウェザー・リポートを創った男』と、山下邦彦Joe Zawinul ウェザー・リポートの真実』を読んでます。以前にtas1014さんが仰っていた、「Come Sunday」というのは、若きザヴィヌルがエリントンのために弾いたエピソードのことも含意していたのでしょうか。後者を読んで初めて知りました。山下邦彦氏の本はとても興味深いです!

tas1014さんのコメントをいただいてから、公私ともにバタバタしておりまして、このコメントは随分後になってからのものとなってしまいました。tas1014さんには、随分不義理してしまいました。大変失礼しました、申し訳ありません。

でも、tas1014さんのおかげで、ザヴィヌル=エリントンについて、真剣に考えよう、という姿勢になりました。もっとも、林建紀さんのエリントン=ザヴィヌル説には親しんでいたのですが、その補強・裏付け(あるいは建設的反論?)を考えてみようと。

その意味で、ここで挙げた2冊は勉強になりました。

 

ザヴィヌル―ウェザー・リポートを創った男

ザヴィヌル―ウェザー・リポートを創った男

 
ウェザーリポートの真実/山下邦彦 編

ウェザーリポートの真実/山下邦彦 編

 

 

この2冊は、ともに読むことで意味があります。グラサーの著作が比較的客観的にそのキャリアを綴っているのに対して、山下氏の方は思い入れたっぷりなインタビュー・ドキュメンタリー。

これらを読んでいくと、確かにザヴィヌルのエリントンへの思いを伺いすることができまして……それについてはまた次回に。