野口久光氏のエリントン紹介。
うんうん、この歌モノもいいよね~。
Sings the Duke Ellington Song Book
- アーティスト: Ella Fitzgerald
- 出版社/メーカー: Polygram Records
- 発売日: 1999/03/23
- メディア: CD
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『エラのエリントン・ソング・ブック I, II 』 エラ・フイッツジェラルド(Verve)
十年来誰もが最高のジャズ・ヴォーカリストとして認めているエラ・フィッツジェラルドがデューク・エリントン楽団によって演奏された有名曲を総ざらいする四枚組の大作LP集の前半にあたる二枚で、この企画はノーマン・グランツとしても屈指の名企画というべきもの。全体の半分(ここでは「I」)をエリントン楽団が共演、あとはベン・ウェブスター(ts)、スタッフ・スミス(vn)、ポール・スミス(p)、バーニー・ケッセル(g)、アルヴィン・ストーラー(ds)という豪華顔ぶれのコンボの伴奏 「II」であるが、ここに改めて驚かされるのはエラの強靭なパーソナリティ、温かい人問性、そのスケールの大きさである。エリントンのよく知られている名曲と取り組み、エリントンの楽団やソロイストを向こうにまわして一歩もゆずらず、すべてを引立て役にしてしまっているのである。
「I」は全部バンドをバックにしたもので「Rockin' in Rhythm」「Drop Me Off In Harlem」「Day Dream」「Caravan」「A列車」「ブルースだけは」〈I Ain't Got Nothing But The Blues〉、「クレメンタイン」「君のことはよく知らなかった」〈I Didn't Know About You〉、「灯りが見え始めた」〈I'm Beginning To See The Light〉、「パディード」など十一曲、原曲を大切にしながら、いつの問にか彼女のベースに誘い、奔放なバップ・スキャットでコナしてしまうのである。ここではジョニー・ホッジス(as)、レイ・ナンス(tp)、クラーク・テリー(tp)、ディジー・ガレスピー(tp)(「A列車で行こう」のみ)などのソロがスポットされ、エラもデュークもまさに横綱相撲の貫禄をみせる。
「II」は前述のコンボ伴奏で「コットン・テイル」「私からきくまで何もしないで」〈Do Nothin' Till You Hear From Me〉(バラッド)、「ソリテュード」(ケッセルのギターだけの伴奏によるこれもバラッド)、「サテン・ドール」「Sophisticated Lady」「スウィングしなけりゃ意味ないね」「Azure」など十曲、伴奏者のうちベン、スタッフ、バーニーがソロを随所にとっているが選曲もよく、エラの出来もいい。とにかくエラのファンには無条件だが、ジャズ史的にみてもこれは一九五〇年代の名セッションとして後世に残るものであろう。 (『レコード藝術』61年4月)
「ジャズ史的にも1950年代の名セッションとして後世に残るものであろう」というのはちょっと仰々しいけど、名盤であるのは間違いないです。
CDだと3枚組になってるもので、この「I」「II」というのはCDだったら1枚目と2枚目半ば、あたりまで。
具体的には、このLP。
少し前に、瀬川昌久氏先生のベスト盤をたどる感じで、戦前のエリントンの専属歌手をみた。
これらの人々と比べてみると、たしかにエラは異質。
オーケストラの一部、ではなく、オーケストラと対等というか、オケの部品にならずに真正面からやりあっている。
管理人が一番好きなのは、「Drop Me Off In Harlem」!
問答は無用。
エラもいいんだけど、レイ・ナンスのオープン・ソロが絶望的に素晴らしいのだ。
下町ライクというか、ブラック・ミュージックの「俗」なグルーヴが全開。
こういうグルーヴはサム・ウッドヤードが得意とするところ。ドラムがサムになってよかったなあ。
このテイク、聴いたことなければ一度聴いたほうがいいよ。
人生損してる。
ところで、野口氏の解説通り、コンボの演奏はエリントニアンこそ参加してるけど、エリントンは弾いてない。ピアノはポール・スミス(イギリスのデザイナーとは無関係)。間違えないように。
最後に苦言をひとつだけ。
この作品、長いんだよなあ。
CDで3枚、LPで4枚。
この量は聴く方も体力が必要。
……そうか! 野口氏もこの作品の長さを表現するために冒頭にあんな文書いたんだな。
「十年来誰もが最高のジャズ・ヴォーカリストとして認めているエラ・フィッツジェラルドがデューク・エリントン楽団によって演奏された有名曲を総ざらいする四枚組の大作LP集の前半にあたる二枚で、この企画はノーマン・グランツとしても屈指の名企画というべきもの。」
これ、1文です。長い一筆書き。
「この作品、いいんだけど長いんだよね」という野口氏の無意識が文章に表れてしまっている、のだろう。多分。
…とりあえず後半に続きます。
あ、野口氏の元ネタはいつものこれです。