1971年の今日、2月17日は、いまも多くの若いミュージシャンに霊感を与え続けている、エリントン晩年の名盤、『Afro-Eurasian Eclipse』の録音日。原点回帰とも言えるこの作品、エリントン晩年の方向性を考える上でも重要です。
・・・お待たせしました。
今日からツイッターの「日めくりエリントン」も再開します。
まあ、今日の記事はタイトルがすべてを物語っています。しかしそれだけではあんまりなので、この作品について少し書いておきましょう。
ただ、この作品は晩年のエリントンを考える上で本当に重要な作品で、さらにエリントン研究、音楽史、文化史まで含めると、とてもブログ記事1日分では扱えないので、さわりだけ。*1
まず、このアルバム、若いミュージシャンにとても愛されてます。わかりやすい例でいうと、以前に紹介した「Red Hot」シリーズの 『Red Hot + Indigo』。あれで、この作品の「Acht O'clock Rock」と「Didjeridoo」がカバーされています。
この作品が好き、と挙げる理由はよくわかります。何しろ、エリントン全盛期と言われる時期は、アルバムとして発表されたものがなく、遡って聴こうとしても、まずアクセスするのに一苦労だからです。その点、LP時代になり、しかもCDで再発されてるものはアクセスしやすい。そして、「ジャズの父」と呼ばれている人が「ど」ジャズではなく、民族音楽っぽいことをやろうとしている! 「御大」と持ち上げられているけど、おちゃめなところあるじゃないか! …平たくいうと、こんな感じではないでしょうか。この作品と『極東組曲』、エリントンの好きな作品として挙げるひとが多いのは、メディアの変遷によるそんな事情もあると思います。
さて、『Red Hot + Indigo』の「Acht O'clock Rock」。カバーしているのはMedeski, Martin & Wood。うん、これ、原曲もワイルド・ビル・デイビスのオルガンが入っているから、それにインスパイアされたのかもしれません。でもこの作品、クレジットにはワイルド・ビル・デイビスの名前はないんですよね。これもこの作品の謎の一つです。
そして『Red Hot + Indigo』つながりでいうと、「Didjeridoo」。いまでこそ、90年代のジャミロクワイの功績もあってか、ディジェリドゥーは広く知られるようになりました。が、当時は本当にマニアックな楽器だったはず。それを取り上げて曲名にまでするところがすごい。先見の明があります。
わたしは、エリントンを「異文化を独自のコード(音楽コード・規則)で解釈し続けた人」と考えています。その意味でいうと、初期のジャングル・サウンドは中流階級のエリントンが黒人音楽を解釈した音楽。中期~後期は手にした名声とのしがらみから、バンド運営やコマーシャリズムにも手を広げましたが、晩年になり、やはり自分のルーツに戻ってきた、と。ストレイホーンを失い、この作品の前年にホッジスも失い、腐れ縁のローレンス・ブラウンも去った状態での『Afro-Eurasian Eclipse』。その流れで考えると、これは失意の中の希望の音楽なのです。
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