小沢健二の『流動体について』が話題を集めている。
「話題を集めている」なんて書いたが、これは他人事ではない。
というか、1976年生まれの管理人にとって、恥ずかしながら渋谷系の音楽は特別な音楽なのだ。とても無関心ではいられないのである。
オザケンといえば、You Tubeにある「いいとも」のテレフォン・ショッキングでの「指さえも」や、未だに正式にアルバムに収録されてない「ある光」の話をグダグダとしたいところだけど、このブログの趣旨と合わないので止めておこう。
とりあえず、オザケンについては、重度のEllington Loverである渋谷毅氏が『球体の奏でる音楽』のスタジオ録音、ライヴともに大々的に参加しており、そのサウンドの重要な位置を占めていることを指摘しておくにとどめておく。
繊細でありながら芯のあるピアノ。オザケンのあのアルバムでジャズの扉を叩いた若者も多いことだろう。この音楽を聴いて「すっかりメランコリー」になるとしたら、それはきっと渋谷毅氏のせいだ。
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ミュージシャン、DJ、レコードコレクター、プロデューサー、著述家…小西氏はさまざまな肩書をもつが、とりあえず「レコード人」と呼ぶことにしよう。なにしろ、所有レコード枚数は万単位。これだけのレコードを持つようになると、普通の人とは感性が違ってしまうはずだ。
そんな「レコード人」な小西氏だが、ジャズのコアなファンではない。
少なくとも体系的にジャズを聴き、レコードを集めるタイプではない、と思う。気に入ったミュージシャンのものは集中して聴くけど、「お勉強」的に、ジャズ史的に重要な作品、なんてものは聴かないと思う。
そんな小西氏が、『Mood Swing』で一気に広く人気を獲得したakikoをプロデュースした。プロデュースのモードはスウィング/ジャイヴ。
これにはビックリしたなあ。
この作品、なんと「It Don't Mean A Thing」で始まるのである。
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「...A, B, C, D, E, F, G, H, I......Jazz! 」
1曲めにエリントンをもってきたのは、「ジャズ」というジャンルへの目配せの意味もあるのだろう。この作品のオープニングとしてこれ以上の曲はない。
当時気になったのは、#7 で「I'm Beggining to See the Light」をカバーしてること。
この作品をつくるにあたってエリントンを意識していたのだろうか?
もしかして、小西氏も Ellington Lover? そんなことを考えてしまった。
小西氏「も」というのは、akikoの前プロデューサーである須永辰緒氏がエリントンをうまく ”cook” しているから。
akikoの出世作である『Mood Swings』のクロージングは「Sophisticated Lady」。
「こんばんは、akikoです」ではじまって小さなジャズ・クラブで歌うという演出は、「sophisticated Lady」(=「気の利いた女」とでも訳しておこうか?)という選曲とあいまって、かなりシャレオツです。
こういうことやりすぎると、関西では嫌われますよ、タツオさん。
akiko & 辰緒 の第2弾は『Mood Indigo』。
これなんか、そのまんまエリントン曲のタイトルだ。
アルバムのタイトルにしてるくらいだ、もちろん「Mood Indigo」をカバーしている。
安易なバラード解釈ではなく、エリントンが「indigo」と呼んだ、濃密な「Blues」の表現が試みられている。 「Mood Indigo」の次は「I Miss You」。スローな曲が続くが緊張感は途切れない。すばらしい流れだと思う。
…というように、須永辰緒プロデュースではエリントンが実にうまく使われているのである。
クラブミュージックを愛し、エリントンファンでもある管理人としては、小西氏と須永氏のエリントン愛を想像するのは自然な流れなのだ。
だから、akikoと小西氏の2人が新たな作品をつくると聞いた時はうれしかった。
それもクリスマス・アルバム!
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管理人は毎年クリスマスには必ずこれをかける。
上の『Little Miss Jazz and Jive』とは異なり、ジャンルはジャズに限定されない。
スカ、ブロークン・ビーツありの小西康陽ワールド。
「Jingle Bell Rock」~「Santa Baby」の流れなんかサイコーじゃないか!
…あれ? でも、エリントンを一曲もやってないぞ?
「Ring Dem Bells」とかやってたらサイコーなんだけど、と期待してたんだけど、さすがにそこまでマニアックじゃないか…。
やっぱりエリントンはそんなに好きじゃないのかな、なんて思ってたら、あるブログ ですごい情報を拾った。
小西氏は『First Time !』がお気に入りだという。
ホントに?
ぼくは散歩と雑学が好きだった。 小西康陽のコラム1993-2008
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野球と
ビールと
ビッグハンドと (P.19)
これから初夏にかけての短い時期は、ぼくにとってはビールの恋しい季節だ。
ビールなら夏のもっと暑い盛りがいいと言う人もいるだろう。
けれどもぼくにとってビールは、この爽やかな新緑のころがもっともふさわしい。
札幌に生まれて、東京の恵比寿に育ったぼくは、どうしてもその土地の名をラベルに冠した銘柄を贔屓にしてしまう。
K社のラガーは苦いし、S社のビールは淡白に過ぎ、A社のドライはなぜかロに合わない。贔屓とはそのように理不尽なものだ。
とは言え、本当にうまいピールとは、けっきょく銘柄など忘れさせてくれる味のことだ。
コペンハーゲンのチボリ公園で、此の地独得のスタイルのホットドッグを頬張りながら飲んだビール。
長い飛行機の旅を終えて、アムステルダムのホテルのロビーで友人と再会した夕刻の、最初の一杯めのビール。
新宿の高層ビルの谷間で、大学時代の悪友だちと久しぶりに飲んだ昼過ぎの生ビール。このときはタコスをたらふく食べた。
神宮球場で野球を観ながら飲むビールも最高だ。実は野球に興味はないが、ビールを飲みに行くのなら、ぼくはいつでも付き合う。
スポーツ観戦にビール、と考えたら頭の中でカウント・ベイシー楽団の演奏が鳴り出して止まらなくなった。
いつでもいちばん最初に思い出すのは、デューク・エリントン楽団と競演した『ファースト・タイム』という傑作アルバム。
豪快なホーン・セクションが歌う『A列車で行こう』を聴いたら、あなたもきっとぼくと同じように、のどが鳴るに違いない。
ホントだった!
しかも、この作品については、この本の別の場所でもっとたくさんのことを書いている。でも、今回はずいぶん長くなったのでそれは次回に。
最後に、同じ本の中から、小西氏akikoのコンピを紹介している文章を引いておく。
akiko presents 『Rockin' Doo Wop, Jump & Jive』
akikoさんがぼくたちのイヴェント「READYMADE JAZZ & JIVE」に来てくれるようになったとき。まだぼくは彼女と知りあったばかりだった。
彼女が須永辰緒さんと素晴らしい2枚のアルバムを作っていたのは知っていたけれど、ジャイヴやロックンロールについても詳しい人だなんてことはまったく知らなかったから、驚いたし、すごく嬉しかった。
だいたい男でDJでレコードマニアだったりすると、女の人が音楽に詳しいなんてあり得ない、と思ってるのです。
でもakikoさんはそういうぼくらの偏見を軽くくつがえしてくれたし、それどころかこんなにイカシた(イカレた)ジャイヴのコンピレイションを作って、単なる酔っぱらいじゃない、ということを自ら証明してみせた。
彼女と突っ込んだ音楽の話をするのは大抵午前3時を廻ったクラブの片隅なのだけど、ぼくとakikoさんは立場やバックボーンは違えど、ある共通した考え方を持っている。
ひとつは古い音楽を愛していること。自分たちが生まれる前に既にあった、洒落ていてワイルドで優雅でお茶目で豊かな音楽。二十世紀の音楽ってなんてチャーミングだったんだろう。
もうひとつ共通しているのは、「音楽はハッピーであるべき」だと考えていること。だって人生はハッピーなことばかりじゃないんだから、せめて音楽だけは楽しくなきゃ、というフィロソフィー。
このコンピに収められている曲はどれも最高。ぼくも知らなかった曲もあるし(グヤジイ)、いつも7インチでかけている曲もある。ザ・コースの「Sh-Boom」という曲を真夜中のクラブでプレイするとき、ぼくはときどき涙が出てしまう。「Life could be dream, life could be dream, doo doo doo doosh-boom!」シュブーンというのはつまり言葉にならない気持ちの爆発する音のことだ。
明け方近く、もうすぐパーティーも終わる時間にフロアで大合唱する「ジャスト・ア・ジゴロ」の楽しさとせつなさ。これが人生だ、と言ってしまいたくなるのをグッと呑み込んで踊る。ふと顔を上げるとakikoさんがマイクをつかんで歌っている。そう、このコンピはそんな幸福な瞬間の真空パックだ。
とりわけチャーミングな女の子たちに聴いてもらいたい。彼女たちが僕らのパーティに来てくれたら嬉しいからね。 (219頁、「惹句王」2005年)
akiko プレゼンツ・ロッキン・ドゥワップ,ジャンプ&ジャイヴ
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