Kinda Dukish (かいんだ・でゅ~きっしゅ)

「デューク・エリントンの世界」別館。エリントンに関することしか書いてません。

『Duke Ellington & John Coltrane』紹介。(野口久光氏)

野口久光氏によるリアルタイム・ジャズ名盤紹介シリーズ。

今回は、「エリントンの」というよりも、モダン・ジャズの名盤のこれ。

本館サイトでも、このブログでも何度も言及してきたこの1枚について。 

録音は62年9月26日。

Duke Ellington & John Coltrane (Reis) (Dig)

Duke Ellington & John Coltrane (Reis) (Dig)

 

 

コルトレーンがホッジス・オケの出身で、その頃はアルトを吹いていたとか、このインパルスの他にもコルトレーンにはエリントン曲を何枚かカバーしてるけど、それはあまりエリントン曲である必然性は感じられないとか、この作品、美しい1枚であることは間違いないけど、お互いの「らしさ」はあまり感じられないとか、エリントンとコルトレーンについてはとりあえず本館でまとめてある。

 

 

デューク・エリントンジョン・コルトレーン
 題名からはコルトレーンがエリントン楽団にゲストとして出演するような印象をうけるが、これはピアニスト、エリントンがコルトレーンと組んで行なった珍しいコンボ・セッションである。超モダン派のコルトレーンと老将エリントンの顔合わせに意外とか、不安を感じる人があるとすれば、それは認識不足、一見不釣合いなこの二人は年齢や持ち楽器も違うし、音楽活動のあらわれ方こそ違え、当代稀な優れたミュージシャンであり、目ざすところに変わりはないともいえる。このLPをきいた音楽的な感銘が何よりそれを証明してくれるのである。そして予想以上にコルトレーンと並んだエリントンがピアニストとして少しも古さを感じさせないどころか、ふたりの間に質的な断層は全くない。演奏はすべてクヮルテットで行なわれるが、リズムはエリントン楽団からのアーロン・ベル(b)、サム・ウッドヤード(ds)と、ジミー・ギャリソン(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)のモダン組とが交代でつきあっている。七曲のうち五曲がエリントンの曲で、「イン・ア・センチメンタル・ムード」(コルトレーンのテナーは前半ストレートなプレイをきかせるがエリントンのソロ、装飾句が芙しい)、「テイク・ザ・コルトレーン」(デュークが彼に贈った曲、テナー・ソロもいいが、デュークのピアノも圧巻)、「マイ・リトル・ブラウン・ブック」「フィーリング・オブ・ジャズ」「アンジェリカ」「スティーヴィー」(主題旋律が美しい)とエリントン・ムードの中でコルトレーンはよく歌い、時に激情的な自己の世界を描き出している、コルトレーンの束洋風の旋律をもった「ビッグ・ニック」ではソプラノ・サックスに持ちかえ牧歌的なソロにきく者をしびれさせる。リズムはエルヴィンの入った方が一段と優れている。ピアニスト、エリントンが改めて高く評価されるべき一枚である。
                 (『レコード藝術』63年6月号)

 

「ふたりの間に質的な断層は全くない」って、これはウソでしょ。

当時のコルトレーン人気に便乗してエリントンの評価を高めよう、なんて意図が透けて見えるような…。

 

最後に、この作品の影響(?)についてひとつだけ。

この作品の「In A Sentimental Mood」は、エリントン作品にしては珍しくサンプリングされまくっている。といってもイントロのエリントンのピアノリフ部分だけの話で、確かにこれは何かに使いたくなるリフではある。

 

 

【引用元】

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野口久光ベストジャズ(1)

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