Kinda Dukish (かいんだ・でゅ~きっしゅ)

「デューク・エリントンの世界」別館。エリントンに関することしか書いてません。

『My People』のサンプリング、その元ネタについて。エリントンとザヴィヌル(その3)

エリントンとザヴィヌルについて、昨日の続き。

 

 

tas1014さんの素晴らしいコメントが始まります。

 

いえいえ、こちらこそザヴィヌル関係のお話が始まるなどと勝手な思い込みをしまして、大変失礼いたしました。管理人さんの仰っているエリントンのナレーションをサンプリングした曲(「Intro to a Mighty Theme」)から始まるザヴィヌルのアルバム「My People」は私の長年の愛聴盤でしたので、最近自分がエリントンの音楽を聴くようになってから、あらためてこの作品にエリントンの語りが使用されるようになった経緯やザヴィヌルとエリントとの様々な関わりに興味を持ち始めたところでした。以下、既に管理人さんを始め多くの方には周知の内容かとは思いますが、少し調べてみましたので、メモ的に書かせてください。
 音楽ジャーナリストAnil Prasadが主宰するウェブマガジン「Interviews」に、「Joe Zawinul: Man of the people / by Anil Prasad」という、ザヴィヌルの「My People」リリース当時のインタビュー記事(1997年)が載っています。(http://www.innerviews.org/inner/zawinul.html)これによると、ザヴィヌルはエリントンのカナダのCBCラジオでのインタビューを聞いたところ、「my people」という言葉についてエリントンの言っていることが、自分(ザヴィヌル)の生涯を通しての言説と同じであると思い、それがこのアルバムを作るきっかけとなったということです。
 カナダのCBCラジオによるエリントンのインタビュー「Duke Ellington CBC interview September 2, 1964」は、インターネット上ではスウェーデンデューク・エリントン協会のサイトなどで聞けるようです。(https://ellington.se/2016/09/09/duke-ellington-cbc-interview-september-2-1964/)このインタビューの23分過ぎ頃、「You write the music of your people … Would you like to expand on it a little bit?」というインタビュアーの質問に、エリントンは面食らいますがやがて落ち着きを取り戻し、「Let's see, my people. Now, which of my people? I'm in several groups, you know. I'm in the group of the piano-players, in the group of (…) The people, that's the better word than my people. Because the people are my people.」と答えていきます。この辺りのエリントンの声がサンプリングされ、「Intro to a Mighty Theme」に使用されています。ザヴィヌルには「my people」を特定の民族や国民に限定されない地球上の全ての人々であると主張する(1997年のインタビュー)自己の思想と一致しているように聞こえたのかもしれません。
 私はザヴィヌルのアルバム「My People」はエリントンの組曲「My People」のオマージュによるものかと思っていましたが、こうしてみるとどうも実際のところはそうでなく、直接的にはエリントンのインタビューの一部がきっかけとなった作品のようであります。エリントンとザヴィヌルの接点は音楽の表面上にではなく、思想や考え方など管理人さんの言われるように「深いところ」にあったのでしょう。
 さて、話が飛んですみませんが、ザヴィヌルとの共演盤「Brown Street」(2006)もあるケルンのWDR Big BandとGarry Dial、Dick Oatts、Rich DeRosa(いずれも私には未知の人ですが)による「Rediscovered Ellington: New Takes on Duke's Rare & Unheard Music」というアルバムが先日発表されたそうですので、お知らせいたします。既にご存知でしたらすみません。(http://jazzineurope.mfmmedia.nl/2017/08/new-release-dial-oatts-rich-derosa-the-wdr-big-band/#.WaSxUmtXMoM.facebook

 

tas1014さん、「周知の内容」ではないと思いますよ~(笑)

もう、付け加えることありません、リンク先の提示など勉強になりました、ありがとうございます。

それぞれみていきましょう。

『My People』発表当時のインタビュー記事、「Joe Zawinul: Man of the people / by Anil Prasad」(1997年)はこれです。

 

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上記記事の『My People』制作のきっかけのほかにも、『My People』をつくる前の話として、大手の会社と契約しようとしたら、アコースティック・ピアノでエリントンのカバー集をやれ、と言われたので席を立った、という話もあります。作曲家としてのザヴィヌルの強い自負の表れですね。

 

そして、ザヴィヌルが耳にしたというカナダのCBCラジオによるエリントンのインタビュー「Duke Ellington CBC interview September 2, 1964」はこちら。

スウェーデンデューク・エリントン協会のサイトです。 

 

 

引いているページこそ英語ですが、メインの言語はスウェーデン語?で読めません。久しぶりにGoogle 翻訳をありがたいと思いました。今日はこのインタビュー記事しか触れませんが、このサイトも興味深いサイトです。後日、また取り上げたいと思います。

 

 

最後はtas1014さんが言及したいくつかの作品と人物について。

 

ザヴィヌルの『Brown Street』。

Brown Street

Brown Street

 

 

そして『Rediscovered Ellington』。 

Rediscovered Ellington: New Takes on Duke's Rare and Unheard Music

Rediscovered Ellington: New Takes on Duke's Rare and Unheard Music

 

 

この作品の紹介記事はこちら。

 

tas1014さんにコメントをいただいた当時聴いたはずなんですが、印象が頭に残っていません。とりあえず、この2枚を聴きなおしてみることにします。