Kinda Dukish (かいんだ・でゅ~きっしゅ)

「デューク・エリントンの世界」別館。エリントンに関することしか書いてません。

『Ella Sings Ellington Song Book』(後半)エリントンの「ナレーション」も聴きどころ。

 

Sings the Duke Ellington Song Book

Sings the Duke Ellington Song Book

 

 

前回の続き。

CDで3枚組のこの大作、LPだと4枚になるため、当時はVol.1と Vol.2に分けられた。

 


この作品、タイトルがすべてを語っていて、コンセプトは「エラがエリントンを歌う」こと。

エラの伴奏をするのはエリントンオケだったり、オスカー・ピーターソンコンボだったり、ベン・ウェブのコンボだったりとこだわりはない。前半はエリントン、後半はコンボ、なんてこだわりもない。思うに、これは「長すぎて2部になっちゃったけど、エリントンオケも、コンボ演奏も両方楽しんでもらおう!」という編集意図が働いたのかもしれない。

 

『エラのエリントン・ソング・ブック III, IV 』 エラ・フイッツジェラルド(Verve)


 前月に出た二枚につづく後半の二枚、IIIは「歌を忘れよう」「In A Sentimental Mood」「Prelude To A Kiss」「Mood Indigo」「In A Mellow Tone」など九曲。伴奏はA面四曲をポール・スミス(p)、ベン・ウェブスター(ts)、スタッフ・スミス(vln)、バーニー・ケッセル(g)、アルヴィン・ストーラー(ds)のクィンテット。B面五曲はオスカー・ピーターソンートリオにウェブスター、ストーラーの五人が伴奏を受け持っている。A面の四曲の方が面白いが、B面の「君に焦がれて」はいい。

 

Ⅳはエリントンのビッグ・バンドが再び共演、「All Too Soon」「Everything But You」「Chelsea Bridge」など六曲をA面で歌い、Bではエリントンがエラの歌手としての偉大さ、人間性、彼女がジャズそのものであるという説明をしながら、彼女を四つの楽章によってスケッチしてみせる。十六分を越える大作で、エリントン的表現のなかにエラの偉大さが表現される。ここではポール・ゴンザルヴェス(ts)、ハロルド・ベイカー、クラークーテリー(ts)、ジミー・ハミルトン(cl)などがソロをしてこれも魅力となっている。そして最後にこのセッションのためにデュークがエラのために書いたブルース「E&Dブルース」のバンド浹奏とエラのスキャット・ヴォーカルで四枚にわたる演奏を終わる。エリントンとエラという顔合わせは企画として面白く、中にはエリントンーバラッドを甘く歌いすぎたものもあるが、とにかくグランツのひとつの業績として残るであろう。              (『レコード藝術』61年5月)

 

「I Let A Song Go Out Of My Heart」は「歌を忘れよう」、「Love You Madly」は「君に焦がれて」か。昔の和訳は味があった。

 

さて、この後半で特筆すべきなのは、野口氏も多めに言葉を費やしている、エリントンによるエラのスケッチ。

実に、このLP4枚目のB面は「Portrait Of Ella Fitzgerald」と「The E And D Blues (E For Ella D For Duke)」だけで占められていて、「Portrait」は16分に及ぶ音楽劇。

ここではエリントンはピアノをストレイホーンに任せ、自分はナレーションに徹している。このナレーションが悪くない。『Drum Is A Woman』に懲りずに、というか、あれで味を占めたというのか、ナレーションもお手のもの。

『Music Is My Mistress』の冒頭では、「自分はすごく緊張するタイプで…」なんて書いてるけど、絶対人前でしゃべるの好きだよね、エリントン。

 

さて、エリントンとエラはこの後もヨーロッパツアーをともにしたり、と共演は続く。

例えばこんな感じ。

Ella & Duke at the Cote D'Azur

Ella & Duke at the Cote D'Azur

 

ちなみにこれは後ほど8枚組の完全盤が出てるけど、これはもはやコレクターズ・アイテム でしょう。

 

8枚組はこれ。

Cote D'Azur Concerts On Verve

Cote D'Azur Concerts On Verve

 

 

 あと、これとか。

Stockholm Concert 1966

Stockholm Concert 1966

 

 

でも、まあ、エリントンとエラの共演盤でベストっていったらこれだ。

 

Ella at Duke's Place

Ella at Duke's Place

 

 

65年の録音。

録音当時、エリントンは66歳、エラは50歳前で2人とも貫禄たっぷり。

耽美的なハーモニーのリード・セクションの「Something To Live For」、
ゴージャスなビッグバンドサウンドの「Imagine My Frustration」に
エリントンのピアノとエラの絡みに涙する「Azure」
(音数が少ないのに、なんであんなに説得力があるのか…)。
そしてエンディングの高速4ビート&スキャット満開のCottontail!
すべての曲が名演奏。

DJ的に言うなら、全10曲、捨て曲なし。 

戦前の専属歌手のボーカルもいいけど、エラとの企画ものもいい。

そういう話でした。

 

 

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野口久光ベストジャズ(1)

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