Kinda Dukish (かいんだ・でゅ~きっしゅ)

「デューク・エリントンの世界」別館。エリントンに関することしか書いてません。

「アナタヲ・アイスル」なエリントン70歳記念コンサート。

いよいよ2冊目です。

 

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野口久光ベストジャズ(2)

野口久光ベストジャズ(2)

 

 

表紙はパーカー。野口久光氏にとって、ジャズとはエリントン、パーカー、そしてベイシーなのです。 

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このディスク・レビュー集、2冊めは70-79年。

エリントン1枚目は70歳記念のアレです。

 

Duke Ellington's 70th Birthday Concert

Duke Ellington's 70th Birthday Concert

 

        

デューク・エリントン 生誕70回記念コンサート

 (Solid State 2枚組)
 今年一月来日する前に、イギリスでのコンサートを録音、二枚組にしたもので、ほとんどすべてが日本のステージでもきいた曲である。しかしここには来日しなかったポール・ゴンザルヴェスも入っており、日本のステージできけなかったゴンザルヴェス、ハロルド・アッシュビー、ノーリス・ターネイ三人のテナー・バトル・ナンバー「イン・トリプリケイト」ほか初吹込みの曲も数曲ある。七十才にしてなお現役として活躍。続々新曲を物にしているエリントン翁に改めて脱帽したくなるが、レコードとして厳正な耳できくならば、二枚組という大作ながら旧作に及ばないのは致し方のないところであろう。もちろんエリントン・ファンにとってはコレクションに加えなくてはならないLPではあるが、今年ホッジスを失ったデュークの痛手は大きいとおもう。なおこのあと、ホッジス在世中の最後の吹込みがファンタジーに残されていることを記しておこう。
                   (『レコード藝術』70年8月)

 

ライブ録音。

69年11月25日(「Satin doll」、at Colston Hall in Bristol, England)、同26日(「Satin doll」以外、at Free Trade Hall in Manchester, England)

相変わらず印象批評というか、大まかな紹介文なのが残念。ただ、印象、イメージで言うと、「Birthday Concert」なのに、祝福ムードでもなく、真っ先に感じるイメージが「パワーダウン」なのは同感。ジャコのBirthday Concertとはエライ違いです。

 

バースデイ・コンサート<FUSION 1000>

バースデイ・コンサート

 

 

ただ、「お父さん、還暦おめでとう!」的なホームパーティとして聴くと、この音源結構楽しめます。野口氏の紹介文を読むとホッジスは参加していないようにも読めますが、もちろん健在ですし、レイ・ナンスとストレイホーンがいないのを除けば、エリントニアンも大体参加。「これまでお疲れ様でした」な雰囲気です。

個人的に、この作品はエリントンのピアノがよく聞こえてくる作品だと思ってまして、オケの中のエリントンに集中して聴きたいとき、特に晩年作品についてはこの作品を聴きます。あと、エリントンのスピーチが1番最後に収録されているのもおもしろいですね。「Final Ellington Speech」がそれで、感謝の言葉のあと、しめくくりとして「Love you madly」を各国語でしゃべるなんてサービスも。「アナタヲ・アイスル」なんて日本語もありますよ。ほかにも、ワイルド・ビル・デイビスがフィーチャーされていたりして、「晩年を聴く」という意図で聴いてみると録音状態のよさも助けになって、じっくり聴ける1枚だったりします。

文献学的なコメントを付け加えておくと、野口氏の「なおこのあと、ホッジス在世中の最後の吹込みがファンタジーに残されていることを記しておこう。」の部分は少し謎です。

おそらく『New Orleans Suite』のことを指しているのだと思いますが、これはAtlanticなんです。Fantasy じゃないんです。

 

New Orleans Suite

New Orleans Suite

 

 

ホッジスの死は70年の5/11。『New Orleans Suite』のホッジスの吹込みは4/27なので、野口氏はこの作品のことを指しているのでしょう、ちょっとした間違いです。なにしろこの後、この本で『ニューオリンズ組曲』を紹介していて、そこでは「ホッジス最後の吹込み」と書いているので。

以上、70歳記念コンサート盤の紹介文でした。 

 

 

(追記 2021/05/10)

「コレクションに加えなくてはならない」という言葉が怖い。

 来日云々の話は、実際に当時を生きていた人間の話として貴重。

 このLP、比較的入手しやすい1枚でもあります。amazon ではすごい値段ついてますが、近所のレコード屋をちょくちょく覗いていれば、手頃な値段で買えるはず。

ということは当時このLPがそれなりに売れていたからなわけで、それはもしかしたらこのレコード藝術のおかげかもしれない。

「コレクションに加えなくてはならない」なんて脅されたら、少しお金のあるエリントンファンは買っちゃいますよ。今よりも全体的に日本が裕福で、メディアの力が強かった時代だし。

その意味で、野口さんに感謝。

 

 

70th Birthday Concert

70th Birthday Concert