Kinda Dukish (かいんだ・でゅ~きっしゅ)

「デューク・エリントンの世界」別館。エリントンに関することしか書いてません。

『エリントン・コンサート・アレンジ(Masterpieces by Ellington)』(野口 久光 氏)

 言わずと知れたコロンビア(Columbia)の名盤。

「コンサート・アレンジ」は邦盤タイトルで、原盤は『Masterpieces by Ellington』。

当初発売時のジャケットはこれ。

Masterpieces By Ellington [12 inch Analog]

Masterpieces By Ellington [12 inch Analog]

 

 

エリントン・コンサート・アレンジ

 これは前回の『Ellington Uptown』に先立って吹き込まれた(1950年)エリントン楽団の名作集で、12吋LPに「いれずみ花嫁」〈The Tatooed Bride〉、「Solitude」、「Mood Indigo」、「Sophisticated Lady」の四曲が、コンサート用の編曲のまま演奏される。アルバムの原題は『エリントンの傑作集(Masterpieces by Ellington)』とあるが、まことに堂々たるジャズの傑作ぞろいである。吹込みも1950年といえば必ずしも新しくないが、レコーディングのよさは今日なおあらゆるジャズ・レコードを含めても一、二を争うすばらしいものである。そればかりでなく、エリントンの最大スターともいうべきジョニー・ホッジス(as)が彼のメンバーとして最後に吹込みを行なったレコードでもあり、往年のエリントン・カラーの出た、最良のレコーディングということにもなる。1931年の作「Mood Indigo」(原文ママ)はジミー・ハミルトン(cl)、ホッジス(as)、エリントン(またはストレイホーン)(p)、ポール・コンザルヴェス(ts)、イヴォンヌ(vo)やレイ・ナンス(tp)、クェンティン・ジャクソン(tb)などがフィーチャーされた14分余にわたる演奏で、従来のSP盤などには味わえぬのびのびとした演奏をたのしませてくれる。1933年の作(原文ママ)「ソフィスティケイテッド・レディ」はエリントンの芙しいピアノ・ソロ、イヴォンヌの文字通りソフィスティケイトなヴォーカル、ローレンス・ブラウンのスウィートなトロンボーンなどを中心としたムーディな傑作。第三曲目の「いれずみ花嫁」はエリントンの書きおろしたコンサート作品で、ジャズのリズムを失わず、エリントンが傾倒しているといわれるドビュッシーレスピーギストラヴィンスキー及びガーシュウィンなどの影響を受けた野心的な作品である。クラシックの作曲家がこれまで試みたジャズ風ないわゆるシンフォニックージャズ作品とは違ってジャズのイディオムを以て書かれたシンフォニック作品として傾聴に価いするものであろう(11分半)。最後の「ソリテュード」は1934年に彼が書いた名曲で、往年のエリントン・カラーが、優れた録音によってかつてないほど豊かに発揮されている。ハリー・カーネイのバリトン・サックス、ホッジスのアルトほか、ハミルトンのクラリネット、アンダーソンのトランペット、ブラウンのトロンボーンなどのソロも見事なものである。

 これはジャズLP中の傑作であり、エリントンの「傑作」として絶対に推鷹できる一枚である。

(『レコード藝術』55年7月)

 

エリントン・コンサート・アレンジ 」は当時の邦盤のタイトル。

批評というよりも「紹介文」なレビュー。

 

「Mood Indigo」「Sophisticated Lady」が書かれたのは、それぞれ1年前の30年、32年だが、それはまあ、よしとしよう。小さいことだ。

 

出典は野口久光氏の著作集から。

 

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野口久光ベストジャズ(1)

野口久光ベストジャズ(1)

 

 

それにしても、「エリントンの最大スターともいうべきジョニー・ホッジス(as)が彼のメンバーとして最後に吹込みを行なったレコード」という表現は当時ならではのコメントだ。ミーハーな感想だが、当時はエリントンオケの動向をリアルタイムで体験できた、というのは羨ましい。

 

その後、この作品は再発されたけど、ジャケットはこっちの方がクールだよね。

Masterpieces By Ellington

Masterpieces By Ellington