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Kinda Dukish (かいんだ・でゅ~きっしゅ)

「デューク・エリントンの世界」別館。エリントンに関することしか書いてません。

NAXOSで聴く、SP時代のエリントン。(1) 『Cotton Club Stomp』

「エリントンは20~30年代にそのジャングル・サウンドにより「コットン・クラブ」で人気を博した」

「エリントンの全盛期は40-42年のブラントン=ウェブスターバンドだ」

 

エリントンに関する神話のひとつとして、よく耳にする言葉である。

管理人は、エリントンの全盛期は必ずしも40年代に限られるものではないと考えているが、しかしエリントンを聴くならこの時代の音楽を聴かない手はない。俗に言うエリントン・スタンダード・ナンバーはそのほとんどがこの時代に書かれたものであり、ストレイホーンとの邂逅、サックス・サウンドの完成、エリントニアンの定着など、エリントン・サウンドの秘密はこの時代に源を発するからである。

 

だが、いざ聴いてみようとすると、ある種の戸惑いを感じるのも事実。それは、この時代の音楽がすべてSP盤で発表されており、「アルバム単位で聴く」という現代のわれわれの音楽体験からすると違和感を感じてしまうからだ。これについては、このブログでも過去に触れたことがある。

 

 

しかし幸いなことに、音源自体は大量に残されている。この時代の音源は、まさに「27-34」というようにタイトルがそのまま録音年代を示していることが多いので、それを目安に選ぶことができる。さらに、もっと効率的にアクセスしようと思うなら、音楽配信サービスを利用する手もある。湯浅学の次の言葉を真似て、「とにかく、アルバムにこだわらずにガンガン聴け!」と言ってしまいたい。

 

 作品が多く残されているのだが、あまりにも多すぎて、聴取者からかえって敬遠されている面もある。サン・ラーの存在を知りながらサン・ラーのレコードやCDを聴こうとしない人々の多くはよくこう言う。

「どれが代表作なのかわからないので、どれから聴いたらいいのか迷う」
 そういう人は実は、別にサン・ラーなど聴きたくないのだ。サン・ラーに限らず、CDやレコードを買って退屈したり不愉快な思いをするのが我慢ならないのであり、サン・ラーだろうがジョン・コルトレーンだろうが、CD買って損した気分になりたくないだけなのだ。そういう人々こそ、もっともっと損をし続けてほしい、と俺は思う。

 

サン・ラーの伝記、『サン・ラー伝 土星から来た大音楽家』 の「監修者あとがき」から。この「サン・ラー」はすべて「エリントン」に変換しても同じことが言えるのではないか。音楽体験とは、音楽を聴くことだけを言うのではない。よくわからない音楽を前にして考えること、レコードとレコードの間のサウンドの変化、物語を想像すること、ジャケ買いや二度買いして失敗すること…管理人は、そのすべてが音楽体験だと思っている。つまるところ、「視聴もできるんだから、音楽評論家の言うことを信用するな。」(小西康陽)なのである。とりあえず、手当たり次第にガンガン聴こう。

 

サン・ラー伝

サン・ラー伝

 

 

…まあ、そうはいってもこれで終わるのは不親切だし、そもそもこんなブログを書く必要もない。そこで、以下、SP時代のエリントンの手軽な聴き方を提案したい。

 

「手軽でない」最終的な聴き方としては、コンプリート・レコーディングなどで、年代・メンバーを確認しながら聴く、ということになるが、とてもじゃないが最初からこんな聴き方はできない。絶対に途中で嫌になる。

 

SP時代ではありませんが、エリントンにはこんなものもあります。

しかしこれはマニア向けのものと考えた方がいい。

The Centennial Edition: Complete RCA Victor Recordings

The Centennial Edition: Complete RCA Victor Recordings

 

 

こういう現状を憂いたのか、NAXOSが面白いシリーズを出している。1927年から53年までの録音を14枚に分けた編集盤。エリントンのLP時代は51年の『Masterpieces by Ellington』から始まるので、SP時代のエリントンをざっと概観できるのだ。

 

コットン・クラブ・ストンプ (Duke Ellington: Cotton Club Stomp)

コットン・クラブ・ストンプ (Duke Ellington: Cotton Club Stomp)

 

 

(ちなみに、LP1枚目がこれ) 

Masterpieces By Ellington

Masterpieces By Ellington

 

 

 

え? それならフランスの Chronological Classicsシリーズがあるじゃないかって?

あっちのほうがもっと遡って24年から始まるし、「全集」としての安心感もあるじゃないかって?

Volume 1 (1924-1929) [The Alternative Takes in Chronological Order]

Volume 1 (1924-1929) [The Alternative Takes in Chronological Order]

 

 

おっしゃるとおりです。

完全を求めるなら、そりゃこのChronological Classicsですよ。

先にバラしてしまうと、このNAXOSのエリントンのシリーズとChronological Classicsは同じ音源。もっと言ってしまうと、NAXOSChronological Classicsを抜粋したものにすぎない。だから、後でダブらないようにするなら初めからChronological Classicsを買えばいい。

 

でも、今回の目的はてっとり早くSP時代のエリントンを概観すること。ならば、ここまでかっちりした全集に付き合わなくてもよいだろう。それに、このchronologicalシリーズは現在入手困難なようだ(ダウンロードは別)。 それに比べるとこのNAXOSシリーズは1枚1,000円程度であり、予算面でも手が届きやすいのである。

 

これでSP時代のエリントンがずいぶん身近なものになったのではないだろうか。

なにしろ、元のChronological Classicsなら24年から53年までの29年間を45枚で収録しているものを、NAXOSは27年から53年までの26年間をそのおよそ1/3の14枚におさめているのだ。正直なところ、Chronological Classicsだと1年間に1枚以上のペースであり、1枚1枚聴くのも大変だ。NAXOSなら2年間に1枚程度のペース。しかも40-42、43-46あたりの重要時期はかなり細かい分け方になっている。ツボを心得た編集だ。

参考までにNAXOSシリーズのタイトルを掲げておく。

 

vol.1  Cotton Club Stomp   1927-1931
vol.2  It Don’t Mean A Thing  1930-1934
vol.3  Reminiscing in Tempo  1932-1935
vol.4  Echoes of Harlem    1936-1938
vol.5  Braggin’ in Brass     1938
vol.6  Tootin’ through The Roof 1939-1940
vol.7  Cotton Tail        1940
vol.8  Jump for Joy       1941-1942
vol.9  Black Brown and Beige  1943-1945
vol.10   Air Conditioned Jungle   1945
vol.11   Time’s A-Wastin’     1945-1946
vol.12   Blue Abandon      1946
vol.13   Jam-A-Ditty       1946-1947
vol.14   Love You Madly      1947-1953

 

 

それでも14枚は多いって? 

そんなことはない。ビートルズなんか7年間で12枚だぞ。

・・・まあ、ビートルズは短期間にあれだけの改革をしたわけで、だから12枚でも全然飽きない、というか全然足りないくらいなのだが、SP音源のジャズ14枚はたしかに抵抗を感じるかもしれない。

 

ここに、管理人がNAXOSシリーズを薦めるもう一つの(実は最大の)理由がある。

このシリーズ、1枚ごとにアルバムのレビューがあるのだが、このレビューをガイドとして利用したらどうだろう。これだけでもずいぶん見通しがよくなるはずだ。おまけにこのレビュー、読み物としてもおもしろい。

 

コットン・クラブ・ストンプ (Duke Ellington: Cotton Club Stomp)

コットン・クラブ・ストンプ (Duke Ellington: Cotton Club Stomp)

 

 

エリントンは、最初からエリントンだった!」 全く他人の影響というものを感じさせない(つまり、模倣や習作が存在しない)芸術家は希有である。エリントン以外では、ストラヴィンスキー(ただし晩年は古典回帰とやらで「音大生以下」に成り下がった)、武満徹チャップリンジャイアント馬場、くらいしか思いつかない。エリントンの凄さは、飽くなきサウンド追求、これに尽きる。浅草の仏具屋から輸入した木魚(The Mooche でポコポコ鳴ってます)、のどじまんチャイム(Ring Dem Bells)、Creole Love Call では何と女性Voにtpのプランジャー・ミュートのマネをさせてます。凄すぎる!

ジャイアント馬場、のあたりに東スポ/大スポ的なあざとさを感じるがおもろいです。

以下、これが47-53年まで続く。

 

収録曲は以下の通り。

1. Cotton Club Stomp
2. Mood Indigo
3. Rockin' in Rhythm
4. Misty Mornin'
5. The Mooche
6. Ring Dem Bells
7. Three Little Words
8. Double Check Stomp
9. The Blues with a Feelin'
10. Jubilee Stomp
11. Creole Love Call
12. Harlem River Quiver (Brown Berries)
13. Black Beauty
14. Hot Feet
15. Saratoga Swing
16. Shoot 'Em Aunt Tillie
17. Black and Tan Fantasy
18. It's a Glory

 

次回からはしばらくこのシリーズをみていくことにする。