Kinda Dukish (かいんだ・でゅ~きっしゅ)

「デューク・エリントンの世界」別館。エリントンに関することしか書いてません。

Norah Sings Ellington。

ノラ・ジョーンズの『Day Breaks』は聴き応えのある1枚だ。

 

DAY BREAKS

DAY BREAKS

 

 

特に管理人の注意を引いたのは、なんといってもエリントンの『Money Jungle』の「Fleurette Africaine (African Flower)をカバーしていることだ。

 

Money Jungle

Money Jungle

 

 

原曲にはもちろんボーカルはいないので、メロディはハミングに近いスキャットで歌われている。さらにショーターのソプラノが添えられ、アルバムのクロージング曲という位置づけである。ミステリアスな雰囲気で終わるのが素晴らしい。この曲がクロージングであるため、もう一度、アルバム1曲目から聴き直したくなる終わり方なのだ。

 

この『Day Breaks』について、ノラ・ジョーンズが自ら語ったインタビューを見つけた。「Fleurette Africaine」についても言及があるので引いておこう。

 

JAZZ JAPAN(ジャズジャパン) Vol.74

JAZZ JAPAN(ジャズジャパン) Vol.74

 

 

『デイ・ブレイクス』(夜明け)の言葉から、あなたは何を想像するだろうか。新しい時代の始まり、あるいは、闇からの脱却だろうか。ノラ・ジョーンズの4年ぶりのニュー・アルバムは、『デイ・ブレイクス』と名付けられている。彼女の周りを取り巻く、暖かな光を思い起こさせるこの作品は、現在37歳の大人の女性、母としての”ノラ・ジョーンズ”を色濃く感じさせるものだ。そこにあるのは、かつてのスウィートネスを脱ぎさったたブルージーで豊潤な大人の女性の声、そしてノラが“コミュニティ“と呼ぶ、気心の知れた仲間との仕合わせな時間だけである。

 アルバムのほとんどの曲は、自宅のキッチンにある小さなピアノで、今年生まれた第2子に授乳しながら作られたという。出産したばかりのせいか、4年ぶりの新録作にもかかわらず、ノラは当初、メディアへの露出をほとんど行っていなかった。
 誰しもがノラの姿を見たくて,やきもきしていた7月上旬、私たちのもとに、とある情報が入ってきた。ノラの新作のショーケース・ライヴがパリで開かれるというものだった。
 その情報を聞きつけた我々は、さっそくノラの生歌を聴くべく、パリに向かった。シャンゼリゼ通りを背にしたゴージャスなホテル・パーシングホールの会場には、各国のジャーナリストが50人ほど集まっていた。宮殿を思わせる何枚もの大きな鏡が、中庭の鮮やかな新緑と着飾ったメディア関係者たちを映し出している。その様子はまるで、「シャンパン付きのピアノ・リサイタルのよう」とは、彼らとは対照的に、カジュアルな格好で虞爽と現れたノラの言葉。少し丸みをおび、柔らかな表情をたたえたノラは、簡単に挨拶を済ませると,早々にグランドピアノと向かい合い、ピアノ1台だけでパフォーマンスを始めた。
 スタート曲は新作「デイ・ブレイクス」から〈キャリー・オン〉。穏やかに、夫を諭すように「昔のことは忘れて、前に進みましよう」と説く同曲は、今の彼女にしか歌えない“婦唱夫随”の歌である。女性は逞しいが、母になると一層、強くなる。そんな事実をあらためて浮き彫りにした,短いながらも濃厚な1曲だ。トークをはさまずに、次にノラが披露したのは、ホレス・シルバーの〈ピース〉。デビュー作の限定版(2003年2枚組)にも収録された名曲だが、今作では御大ウェイン・ショーターを迎え、再度、レコーディングに挑戦している。ひとつひとつの言葉をかみしめるように歌う、円熟味と迫力を増したノラの声に、我々はぐいぐいと引き込まれていく。それから最後にノラが選んだのは、誰もが知る彼女の代表曲〈ドント・ノウ・ホワイ〉。メロディを奏でると同時に沸き起こった歓声に、嬉しそうに笑顔で応えるノラ。そんなやり取りもあってか、ノラは少しの即興を交えながらも、あくまでオリジナルに忠実に、今のノラ・ジョーンズの声でこの曲を歌い切った。
 ライヴの興奮冷めやらぬ中、我々は厳戒なチェックの後、特別室に通された。そして、物々しい警備とは反対に、穏やかな表情で私たちを迎え入れてくれたノラに、直接、インタビューする機会を得た。


 今回の新作に関して日本初のインタビュー

 

ーー これまでにあなたはカントリー、フォーク、ロック、ソウル、ジャズと、様々なジャンルの音楽を融合してきました。新作『デイ・ブレイクス』はあなたのデビュー作にも通じる、ジャズ・ルーツを意識した作風になっています。何かきっかけとなる出来事があったのでしょうか。

 

ノラ 2014年に「Blue Note at 75」というレーベルの75周年を祝うコンサートに参加したの。その時にウェイン・ショーターブライアン・ブレイドとコラボして、もっとやりたい!って、強く感じてね。それから彼らとの共浪を頭に描いて曲を作つているうちに、自然と私の中に”ジャズ”が流れ出したの。全編にわたって、こんなにもピアノを弾いたのはデビュー作以来だったんだけれど、皆に“ジャズ・アルバム"といわれたファーストも、自分では色々な音楽とのミックスだと思っていて。ニュー・アルバムは、それ以上に”ジャズ”を歌い,“ジャズ“を意識したものになっているはずよ。


ーー 社会的・政治的なテーマを取り上げた曲もありますが、あなたの作品では珍しいように感じました。今回、あえてそのテーマを歌ったバックグラウンドについて教えてください。

 

ノラ 最近、特に強く感じているのはこの銃社会で生きる恐ろしさについて、私たち若い世代は、もっと声を大にして,プロテストしなければならないということ。暴力が日常化していて、誰かがストップをかけなければならない。そんな普段、皆が感じていること、私の思っていることが歌に表れているのかもしれないわ。

 

ーー ホレス・シルバーの〈ピース〉は、デビュー作の特別盤でカバーしてから、今回で2度目のカバーになります。改めて選曲された理由とは何だったのでしょうか。

 

ノラ ウェイン・ショーターとのセッションを考えた時、この曲がふと頭の中に浮かんだの。昔から大好きな曲だけれど、アルバム自体では取り上げたことがないことに気付いてね。歌詞も今の時世に合っていると思った。ウェインの演奏は,まるで絵画のようだったわ。だからなのか、彼と共演する上で無意識だけれど、以前とは違う歌い方をしているの。10年ぶりに昔のバージョンを聴いて、そのあまりの違いに驚いた。でも、結果的に素晴らしいものになって、大満足しているわ。

 

ーー ほかにもデューク・エリントンの『マネー・ジャングル』から、〈フルーレット・アフリケーヌ〉(アフリカの花)をカバーされていますが、過去にはディー・ディー・ブリッジウォーターも1996年のアルバム『プレリュード・トゥ・ア・キス』で歌っています。この曲のどんなところにインスパイアされたのでしょうか。

 

ノラ デューク・エリントンのバージョンの生々しい迫力と美しさに惚れ込んでいるの。録音は完全に即興だったと聞いているけれど、私もこのような、誰もやったことのないオリジナルな作品を生み出したいと強く感じた。この曲にはジャズの息づかい、自由な精神、そのすべてがつまっているの。だからニュー・アルバムのコンセプトを考えた時、この曲は外せなかった。

 

ー一 話は戻りますが、Blue Note at 75のコンサートでは、デビュー作から〈アイヴ・ガット・シー・ユー・アゲイン〉をサックスはウェイン・ショーター、ドラムスはブライアン・ブレイド,ベースはジョン・パティトゥッチ、ピアノはジェイソン・モランという豪華なメンバーで演奏されました。なぜ、この曲を選ばれたのでしょうか。
ノラ ジェイソン・モランがメンバーを集めていたんだけれど、誘ってくれた時は、もちろんよっ!って、大興奮だった。選曲も彼がしてくれたの。〈アイヴ・ガット・シー・ユー・アゲイン〉がどんなスタイルにも対応できる最適な曲なんじゃないかって。実際、完璧なチョイスだったわ。その結果、パフォーマンスはアルバムとも異なる、別次元のものになったから。


――新作での共演につながったBlue Note at 75で、半世紀以上も第一線で活躍するウェイン・ショーターやオルガンのドクター・口ニー・スミスなどの巨匠たちと共演してみて、どのような印象を受けましたか。

 

ノラ ウェインとはハービー・ハンコックのレコ-ドで昔共演したことがあるの。ブライアンともデビュー作から一緒にプレイしているんだけど、ドクター・ロニー・スミスとジョン・パティトゥッチとは初めてだった。でも、ステージでは初めてと思えないほど楽しくプレイができて、忘れることのできない、エキサイティングな体験になったわ。
ーー ブルーノートはまさにあなたの“ホーム”といえますが、2000年にあなたがブルーノートと契約した時の社長は,故ブルース・ランドバルでした。その後,社長はドン・ウォズに変わり、レーベルは大きく舵を切りました。その際はどのように感じられましたか。


 ノラ 昨年、ブルースが亡くなって、彼がいなくなったって実感するまで少し時間がかかった。彼はずっと私の相談相手で、大切な友人だったから。ブルーノートの面子もデビュー当時とはすっかり変わってしまったけれど、ドン・ウォズはブルースのスピリットを上手く引き継いでいると思う。彼は新しいアイディアを常にたくさん持っている人だし,ドンがトップである限り,レーベルは安泰よね。ドンのことは大好きよ。それでもブルースの代わりは誰もいないし、彼に会えないのは,やはり寂しいわ。

 

 そう話し終えたノラの横顔は,息をのむほど美しかったが、私たちが昔から知っている”ノラ・ジョーンズ"の顔ではなかった。デビューしたころの好奇心に満ち溢れた初々しいノラは、もうどこにもいない。代わりにそこにいたのは、人生の哀しみ、愛しさとエレガンスを知り尽くした,ひとりの大人の女性であった。そして、それは驚くべきことでも何でもないのである。なぜなら,私たちが人生の『デイ・ブレイクス』=「夜明け」で見つけたのは、いくつもの苦い経験を経て、ジャズの新境地に達した、母なる“ノラ・ジョーンズ“だったのだから。

(Isabelle Maiko Morin, 翻訳: 落合真理

 

・・・話を戻すなよっ! もう少しエリントンのことを訊いてくれよ! と思ったが、これだけでも満足すべきなのだろう。まったく触れられていない曲もあるのだから。考えてみると、「ブルーノート」「エリントン」と来れば『マネー・ジャングル』を想像するのは当然なわけで、あの作品の中から「アフリカの花」をカバーするのは自然な流れだったのかも。「ウォーム・ヴァレー(Warm Valley)」をカバーするわけにはいかないもんね。

 

インタビューアーが話していたアルバムはこれ。

Ellington;Prelude to a Kiss

Ellington;Prelude to a Kiss

 

 

この「アフリカの花」はパーカッションを強調した、かなりアフリカを意識したアレンジ。でも、ディー・ディー・ブリッジウォーターは歌ってないよ。Bobby Watsonのアルト・ソロをフィーチャーしたアレンジです。今回のノラの作品とはあまり関係ないんじゃないかなあ。

 

あと、この号のJazz JAPANには、復刻作品のコーナーがあって、そこではこんなTBMのエリントンものの紹介もあった。

 

ワン・フォー・デュークONE FOR DUKE

ワン・フォー・デュークONE FOR DUKE

 

 

「「5 DAYS IN JAZZ 1975」の4日目に行われた「デューク・エリントンに捧げる夕」を実況録音した今田勝のTBM第5弾。小気味よくハッピーな“ワン・フォー・デューク”、抒情的かつブルージーな“ブルー・レイン”のオリジナル2曲が絶品のピアノトリオ作品。」らしい。「スティーヴィー」なんて渋い曲もカバーしてる。これだけでも聴いてみたい。

 

ソリチュードSOLITUDE

ソリチュードSOLITUDE

 

 一方で、こっちはタイトルからエリントンものっぽいけど、そういうわけではない。

試聴できるので聴いてみると・・・え゛、古谷充氏、歌ってるじゃん! 「Solitude」「I Let A Song Go Out of My Heart」の両方とも歌ってる!

関西のイベントではおなじみの古谷氏だけど、ボーカルもやってるなんて知らなかった! 歌も悪くないです。サックス吹いて、歌も歌うって…菊地成孔氏と同じじゃないですか! びっくり。今回のエントリで一番ビックリしたのはこのことかも。

関西では常識なんですか、これ?