ニュース、にしては少し遅くなってしまったが…
デューク・エリントンとニクソン大統領の貴重な映像が公開
デューク・エリントンの70歳の誕生日を祝うパーティーでの演奏を収めた映像が、インターネット上で公開されている。「An Evening at the White House with Duke Ellington」と題した約15分間の映像は、69年4月29日にリチャード・ニクソン大統領が主催したワシントンのホワイトハウスにおける祝宴からのもので、公開元はリチャード・ニクソン財団。
マーサー・エリントン、キャブ・キャロウェイ、ベニー・グッドマン、ビリー・エクスタイン、ディジー・ガレスピーのミュージシャンや各界の著名人が来場。司会者のウィリス・コノーバーが人選したバンド・メンバーはビル・ベリー、クラーク・テリー(tp)、J.J.ジョンソン、アービー・グリーン(tb)、ポール・デスモンド(as)、ジェリー・マリガン(bs)、ジム・ホール(g)、ビリ一・テイラー、ハンク・ジョーンズ、デイブ・ブルーベック、アール・ハインズ(p)、ミルト・ヒントン(b)、ルイ・ベルソン(ds)、ジョー・ウィリアムズ、メアリー・マヨ(vo)で、〈A列車で行こう〉くイン・ア・センチメンタル・ウード〉くスイングしなけりや意味ないね〉〈ムード・インディゴ〉〈パーディド〉くジャンプ・フォー・ジョイ〉を演奏。
ニクソン氏の提案でジャム・セッションが始まると、ウィリアムズ歌唱のくストーミー・マンデイ〉で来場者によるダンス大会となり、ガレスピー(tp)も飛び入りで演奏。さらにエリントンがスピーチをして、大統領夫人に因んだ新曲〈パット〉をソロ・ピアノで弾く。祝宴はエリントンが音楽を通じて世界中に自由を伝えた功績を称えた「プレジデンシャル・メダル・オブ・フリーダム」の授与式へと進行。大統領から勲章を受け取ったエリントンが、「自由」に関する思いと謝辞を述べるシーンが感動的だ。大統領自らピアノを弾いて、来場者がくハッピー・バースデイ〉を合唱する場面も胸を打つ。 https://www.youtube.com/watch?v=jW9PdAY8_D0 で視聴可能。(『JAZZ JAPAN』, July 2016)
この動画は2016年4月27日に公開。つまり、エリントンの117回目の誕生日に公開された、ということだ。ニクソン財団も粋なことをする(一方で、もっと早くから公開してもよかったのに、という気もする。なんでこのタイミングなのだろうか)。
妹のルースを連れて入場するエリントン、セッションの様子、ニクソンとエリントンのスピーチ、エリントンとニクソンのソロ・ピアノなど、見所は多い。
もっとも、このパーティ自体はよく知られていたもので、すでに音源も発売されていた。
- アーティスト: デューク・エリントン,デイヴ・ブルーベック,ポール・デスモンド,アービー・グリーン,J.J.ジョンソン,ミルト・ヒントン,ハンク・ジョーンズ,ジェリー・マリガン,ビリー・テイラー,アール・ハインズ
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2002/06/26
- メディア: CD
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MP3音源のダウンロードも販売。
Duke Ellington 1969: All-Star White House Tribute
- アーティスト: Duke Ellington
- 出版社/メーカー: Blue Note Records
- 発売日: 2004/10/01
- メディア: MP3 ダウンロード
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これまでも、エリントンのスピーチやニクソンのピアノなど、部分的には観ることもできたのだが*1、公式な動画として、まとまった形で公開してくれたのはうれしい。
なにしろこの日の来場者が豪華。ミュージシャンのほか、『Anatomy of a Murder』の監督、オットー・プレミンジャーや、ガンサー・シュラーも参加。エリントン自身の演奏は「パット」の1曲だけだし、セッション的な要素が強い演奏だが、このパーティは音楽的というよりも文化史的な意義があるイベントだったといえるだろう。
このときの入場者のより詳細なリストや、スピーチの書き起こしは本館で。
【本館】
【追記 2017 6/3】
こんな本が出版された。表紙の写真はこのバースデイ・パーティのもの。
音楽大使としてのエリントンを、ホワイトハウスはどう考えていたのか。
未読だが興味深い本である。
ジャズ・アンバサダーズ 「アメリカ」の音楽外交史 (講談社選書メチエ)
- 作者: 齋藤嘉臣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/05/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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